■ 怪盗セーラーマーキュリー危機一髪 ■


1 発端

 『闇の女王』が3千年の時を経て復活しようとしている。  それを阻止するには、12星座にまつわる、『天宮の秘宝』を揃え、魔法陣の所 定の位置に鎮座するしかない。ルナのリサーチにより、天宮の秘宝は、海外に4 つ、国内に8つ存在していることがわかり、海外の物については美奈子が、残り の8つは他の4人が手分けして手に入れることになった。  とは言え、秘宝の多くは美術的、あるいは骨董的価値が高いものであり、それ を手に入れると言うことは・・・盗むしかない。  夏休みが始まって間もないある日、5人と2匹はレイの家に集まっていた。 「事情を話せば協力してもらえないかしら・・・?」  と、亜美。 「・・・闇の女王が降りてくるからって言って?」  レイは訝しげに眉をひそめる。 「うぅん・・苦しいねぇ。」  まことは亜美に気を使いながら、そう言った。 「使ったらちゃんと返すしぃ!へーきへーき!」  うさぎは妙に浮かれている。 「随分機嫌がいいわね、うさぎちゃん。」 「うっしっし・・だってあれでしょ?美女怪盗って奴になるわけでしょ?一度や ってみたかったんだ。」 「はぁ〜・・・」  脳天気なうさぎに亜美は頭を抱えて溜息をついた。 「あ〜あ・・・泥棒になっちゃうなんて・・・」 「泥棒だなんて人聞きの悪い!正義の美女怪盗よ!」 「美女ってとこは譲れない訳ね?ま、そこは私も同感だわ。パリの街を暗躍する 怪盗セーラーVちゃんね。」  美奈子もまんざらではなさそうだ。 「今回ばかりは仕方ないわよ。亜美ちゃんも理解してね。」  ルナがそう言うと、亜美は素直に頷いた。 「で、今回の任務はいつものような派手なスタイルって訳にはいかないと思うの よ。」  続けてルナが説明したのは、新コスチューム・・・言わばセーラー戦士暗躍バ ージョンについてであった。それは既に開発済みであり、ルナはそれぞれのステ ィックに小さなオプションを取り付けていく。これで5人はそれぞれのイメージ カラーをぐっと濃くした全身レオタードに身を包むことになった。妖魔を相手に する訳ではなく、防御力よりも動きやすさに重点が置かれているため、今までの ものより大分薄手であり、ボディーラインが浮かび上がるだけでなく、中身が少 し透けて見えている感じである。 「ちょ・・ちょっとこれ、透けすぎてない?」 「大丈夫だよ。それに、誰かに見せる訳じゃない。見られないため、素早く動け るための仕様なんだから。」 「う・・うん。」  白一点と言うべきか?集まっているメンバーで唯一雄であるアルテミスにそう 言われながらも、戦士達は頬を赤らめていた。  秘宝の一つ、乙女座にまつわる『乙女の涙』と言うエメラルドは仙台に住む大 富豪のコレクションであると言う。 「仙台か・・・」 「仙台ねぇ・・」 「仙台と言・え・ば!」  美奈子の言葉を合図に、全員が一斉に亜美の方に目を向ける。 「な・・何?」  顔を赤らめながら戸惑う亜美。 「まぁ、しらばっくれちゃって!憎らしい」  と、レイ。 「説明が必要なのかしらん?」 「えっ?・えっ?・・えっと・・・あの・・その・・」 「うっしっし・・・亜美ちゃんに行ってもらうしかないよねぇ?」 「だってあれだもんね〜?」 「そうそう。」 「あの人がいるもんね〜?」 「あの人?あら、誰のことかしら?」  美奈子が白々しく首を傾げ、三人が声を揃えて答える。 「浦和良く〜ん!」 「うふふ・・・でしょ?亜美ちゃん?」 「でも・・だって・・そ・・そんな動機で役割を決めるなんて、よ・・よくない と思うわ!」 「あ・そ。亜美ちゃん行きたくないって。じゃあ、仙台には誰が行く?」 「そ・・そんなぁっ!」  亜美の反応に全員がくすっと笑う。 「ど・う・す・る・の?」 「あぁん!もう!行きます!私が行きますっ!」  頬を真っ赤に染め上げた亜美は、やけくそみたいになってそう叫んだ。 「それで、よし。」  満足げに頷くまこと。 「でも、よく続いてるわよねぇ、遠距離恋愛。」 「亜美ちゃんも良くんも誠実で真面目だからねー。」 「ね?ね?二人ってどこまで進んでんの?」 「えっ・・えぇっ?」  ぶしつけな質問をするのは勿論うさぎであり、どぎまぎする亜美にまことが慌 てて助け船を出す。 「よしなよ、うさぎちゃん。」 「えー!だってみんなだって知りたいよ。」 「そうそう。」 「いいじゃないか、そんなこと。放っといてあげようよ。」 「・・・まぁこちゃん?」  声を低くしたうさぎが、上目遣いにまことを睨み付ける。 「ん?」 「まこちゃんは知ってるのね?」 「え・・いや・・そんなこと・・・」 「知ってるからそんなこと言えるんでしょ〜?」 「ずるーい!」 「あ・・待って!みんな待って!言うわ。私が言うから。」  亜美の言葉に一同沈黙して耳を傾ける。 「あの・・あのね・・・」  ごくり・・・  誰かが喉を鳴らす音が聞こえた。 「今年のゴールデンウィークに良くんこっちに来てて・・・」 「全然知らなかった・・・」  喋り出そうとするうさぎを、美奈子が口の前に指を一本立てて制する。 「その時に・・あの・・その・・・」  ごくり!  今度はみんなが喉を鳴らした。 「私たち・・私たちぃ・・・」  亜美は耳まで真っ赤にし、もじもじと手元を見つめて告白している。一体、何 て言えばいいのだろうか?亜美は口ごもり、そして答える。 「・・・む・・結ばれ・・たの・・・あぁっ!」  そこまで言うと、亜美は両手で顔を覆ってしまい、掠れる声でこう言った。 「は・・恥ずかしいっ・・」  一瞬室内は静まりかえり、そして拍手が湧き起こる。 「きゃぁ〜っ!」 「やったね!亜美ちゃん!」 「おめでとー!」 「ひやー!聞いててこっちが熱くなっちゃった!」  まことだけが感慨深げに腕を組み、ウンウンと何度も頷いていた。  ひとしきり大騒ぎが終わると、片肘をついたレイが口を尖らせる。 「なぁんか、面白くない。仙台に行かせたくなくなっちゃったなぁ!」 「え・・そ・・そんな・・・」 「妬かない妬かない!えっへっへ・・・レイちゃんの方はまだなのね?」 「雄一郎ってば一つ屋根の下に住んでるっていうのに!・・・ところで、ずぅい ぶんと余裕があるわねぇ、うさぎ!」 「私たちなんて、もう、とっくだもぉん!」 「ちぇっ!取り残された気分だわ。あ〜あ・・・亜美ちゃんにまで先を越される なんて!」 「私もあっちに行ったら、アランと再会できるかも。うふふふっ・・・」  美奈子は『卒業組』に加わろうと、とってつけたような台詞を言う。 「ふん、だ。失っちゃったら、もう戻らないんだから。ね、まこちゃん?」 「え・・あ・・う・・うん。」 「な・・何よその反応・・・まさか?」 「うん・・・実は・・・先月・・・」 「えぇ〜っ!」 「な・・何よそれ!何にも聞いてないわよっ!って・・・亜美ちゃんは知ってた ね?」  困った顔で頷く亜美。 「だ・・誰なの相手は?」 「先輩と・・再会しちゃってさぁ・・・」 「すごーい!運命ってやつ?で?で?」 「やっぱり亜美ちゃんは仙台に行かしたくなぁい!」  セーラー戦士達にとって、恋人との進捗状況は、世界平和と同じレベルで会話 される。この調子で本筋からずれていくので肝心の話はいつになったら終わるの か検討がつかない。ルナは深く溜息をつき、アルテミスは取り敢えずヨーロッパ に行く必要がないことをどうやって美奈子に知らせようかと悩んでいた。  こうして高校2年の夏休み、亜美は怪盗セーラーマーキュリーになることにな ってしまった。 <前略 浦和 良様 今日は嬉しいお知らせがあります。>  その夜、亜美は机に向かって手紙をしたためていた。お気に入りのパジャマの ズボン部分は夏の暑さに履いておらず、丈の短いネグリジェを着ているかのよう に見える。露わになっている白い太股は、身体の重みでむっちりと合わさってい た。上半身には下着を着けておらず、柔らかそうな盛り上がりの頂では、微かに 乳輪が透けて見える。  良くんに会える!  突然の展開に、亜美は心を輝かせ、家に戻るとすぐ良に電話をした。二人の交 際は電話よりも手紙による部分が大きく、声を聞くのは久しぶりのはずだった。  が・・・誰も電話に出ない。良の携帯も、家の方の電話もだ。  夏休みに入ってるから、家族でどこかに出掛けているのだろうか?  ・・・会えないかもしれない・・・  そんな考えが胸をきゅん、と締め付けたが、亜美は気を取り直して便せんに筆 を走らせ始めたのだ。  いっつもは『拝啓』で手紙は始まり、それから時節の挨拶があり、そして本題 へと移って行くのだが、実は夕べも手紙を出している。だから今夜は『前略』で の書き出しだ。 <急に大切な用事ができて、仙台に行くことになりました。>  亜美がセーラー戦士であることを良は知っている。知っているけれど、亜美は それを認めておらず、良も深く追求はしない。それが二人の不文律であった。そ の上で、こう書いておけば、どういう種類の用事なのかは良に伝わるだろう。勿 論、泥棒をしに行くとは言えないけれど。 <用事が済んでも数日間は滞在できると思うので、その時にもし、良くんの都合 がついて、会えたら嬉しいな。>  それから少し亜美は考え、書くか書かぬか思い悩んでから筆を続けた。 <あの日・・・とっても恥ずかしくて、とっても痛かったけれど、亜美はとって も幸せでした。あんなに満ち足りた気持ちが世の中にあったなんて!それから、 良くんが男で、自分は女なんだな・・ってふいにそんな考えが浮かんで、そして 女に生まれてよかったなぁ・・そんなふうにも感じました・・・>  そこまで書いて読み直した亜美は、独りで顔を真っ赤に染めると、 「きゃぁ!駄目!やっぱり駄目よ!」  そう言って手紙を慌ててシュレッダーにかけた。書き損じは計算用紙として再 利用するのが常なのだが、この恥ずかしい文章を残しておくことは無理だ。   改めて手紙を書き直し、封をした亜美は、封書にそっと唇を押しつける。 「・・・良くん・・・」  胸がどきどきし、身体がぽっと熱くなった。  亜美は机の上の写真立てを手に取って見る。緊張な面持ちの二人・・・良と亜 美の写真がそこには飾ってあった。並んで写っているだけで、肩を抱かれたりし ている訳ではない。でも、そのまことが撮ってくれた写真を見れば、あの時微か に触れ合った腕の感触が蘇ってくる。今年のゴールデンウィークに撮った写真で ある。  ・・・この日、この写真を撮った夜、二人は・・・・  亜美は写真立ての隙間に指を差し込み、中にしまってあるもう一枚の写真を出 した。微笑む良の姿がそこにある。良単独で写っている写真だ。  亜美はその写真をしばし見つめ、そしてぎゅっと胸に抱いた。 「あぁ・・・良くぅん・・・」  それからスタンドの電気を暗くし、ベッドに身体を滑り込ませる。  しなやかな肢体がシーツの上で蠢き、白い二本の手がそれぞれの目的地を求め て自らの身体の上を彷徨う。やがて左手は乳房に・・・右手は股間に・・・  初体験前後ではっきりと変わった生活習慣がある。  オナニーだ。  それまで、戯れに自らの身体をくすぐったことはあったけれど、最期までした ことは滅多になかった。けれど、あれから・・・良に抱かれてからというもの、 一旦スイッチが入ってしまうともう切ることができなくなり、その白魚のような 指でいつも身体を頂まで導いてしまうのだ。  今夜も・・・  掌が捉えたパジャマの下の乳房は次第に硬くしこってきている。その硬さを確 かめるように数回ゆっくり撫で、揉んだ後、中指の先端だけで乳房の頂を擦って いく。 「んっ・・はぁ・・・」  薄く柔らかいパジャマの生地を可愛い突起が持ち上げている。敏感なその突起 をパジャマ越しにしこしこと擦ってやると、掌で揉んでやる以上に乳房が張り詰 めていく。 「はぁ・・はぁ・・」  パジャマのボタンをいくつか外し、掌をその中へ。  乳房は熱く火照っており、掌の冷たさがひんやり心地いい。亜美はその豊かな 乳房に掌を宛がい、ゆっくり揉みし抱くと同時に、親指と人差し指で乳首を摘み 上げ、抓るようにして擦りあげる。 「んっ・・んんっ・・はっ・・はぁっ・・・」  まだ、たった一度きりの睦み合い。その記憶は強烈であり、反面、朧気である 。  恋人の愛撫を思い出しながら乳房をまさぐるが、再現しようとすればするほど 感触の記憶から遠のいてしまう。あるいは、恋人には僅かに触れられただけで激 しい快感が得られたのに、自分で与える刺激は、物理的により強くても、快感で は遠く及ばないのだ。自慰における愛撫の仕方も、初体験前とは大分変化して、 随分きついものになったのに・・・ 「はぁ・・はぁ・・んっ・・あっ・・」  乳房を揉む手が荒々しくなり、乳首を摘み上げる指が強さを増す。 『あぁ・・私・・・エッチになっちゃってる・・・』 「んっ・・あっ・・あっ・・・」  抑え気味だった声が、次第に漏れるようになってきた。 『こんな・・・あぁ・・あんまりエッチになったら・・き・・嫌われちゃうのに ぃ・・・』  心の中の言葉とは裏腹に、頃合いを見計らっていた股間の右手がいよいよ動き 出す。 「ん・・!」  下着は既に少しだけ濡れていた。  立てた中指が下着越しに一番敏感な突起に触れただけで、亜美はぴくん、と身 体を跳ね上げ、小さく声を漏らしてしまう。  けれども、亜美はより強く刺激を与える方へは進まず、一度股間から手を離し 、太股を股間に向かってさすり上げ始める。 「はぁっ・・はぁっ・・・」  あの時もこんな感じだったのだ。  良は遠慮がちに、そして質感を確かめるかのように、何度も何度も太股を撫で 上げたのだ。恥ずかしく、そして心地よく、亜美はそれだけで股間を熱くしてし まい、それが良に知られることが恐かった。 「あ・あ・あ・・・・良・・くぅん・・・あっ・・はぅんっ!」  再び股間の亀裂に指が戻ってくると、さっきとは比べものにならないくらいに 、ぐっしょりと濡れている。 「はぁ・・はぁっ・・はぁっ・・・」  もう、我慢できなかった。亜美はパジャマの裾をまくり上げ、下着に掌を潜ら せていく。 「はっ・・んんぅっ・・」  指先がクリトリスを捉えると、亜美は小さく仰け反って甘い声をたてた。 「んっ・・・んっ・・・んっ・・・」  くねくねと中指が尺取り虫のように亜美の谷間で蠢くと、奥の泉からこんこん と湧き出る愛液に、指の動きは滑らかになっていく。  くちゅ・・くちゅっ・・・  湧き出る愛液に、指先が淫猥な音を響かせ始めるまで、そう時間はかからない 。 「んっ・・んっ・・あっ・・んっ・・あっ・・あっ・・」  リズミカルに指は動き、喘ぎ声のテンポも次第に速まる。足の指は時にはシー ツを掴み、時にはシーツの上をもどかしげに滑り、そして閉じ加減だった太股は 開閉を繰り返しながら、だんだん大きく開いていく。 「あっ・・あぁっ・・う・・くうぅん・・はっ・・はっ・・」  今や大きく開ききった股ぐらの中心では、下着の底の広い範囲に沁みが浮かん でいた。恋人にはとても見せられない痴態である。良に愛撫されて宙に浮いてい るような快感を覚えていた時でさえ、こんなにも足を開いてはいなかった。 「あン・・あン・・あぁんっ・・うふぅっ・・んっ・・あ・あ・・」  更に、股ぐらを開いたままの状態で、腰が物欲しげにくいっくいっと上下運動 を開始する。股間への愛撫を主体にしながらも、乳房をこねる手にも力が入って きた。 『あぁ・・私・・・こんな格好・・・い・・いやらしい・・・』  良くんが、セーラー戦士の仲間達が、蔑み、呆れたような視線で自分を見てい るうな気がしてくる。 『あぁん・・い・・いやン・・・み・・見ないで・・あぁ・・亜美のこと・・笑 わないでぇ・・』  自分のやっていることの淫らさ、とっている姿勢の無様さに、亜美はひどく羞 恥心をかきたてられ・・・そして興奮していた。 『ゆ・・許して・・エッチな・・あぁっ・・淫らな亜美を・・許して・・』 「あっ・・んっ・・あっあっあっあっ・・・あ・・はぁ〜んっ!」  くちゅくちゅくちゅくちゅっ・・・  全身がぷるぷるぷるっと痙攣し、指の動きがゴール目指して激しさを増す。 『良くん!良くん!・・いっ・・いくっ・・・あ・亜美いきますっ!・・あぁっ ・・良くぅん!・・い・・いくぅっ!』 「んっ・・くぅ〜んっ!・・ん・・・んんっ・・・」  びくっびくっと断続的に腰を突き上げ・・・  亜美は達していた・・・ 「あ・・あぁ・・はぁっ・・はぁ・・ん・・・」 『良・・くぅん・・・』  会えるかもしれない・・・ううん・・きっと会える・・もうすぐ会える・・・  きっと良くんは自分を見て微笑み、そして抱きしめてくれる・・・ 「はぁ・・はぁ・・・良くん・・・会いたかった・・・」  その時のことを想像し、亜美は濡れた唇で独りそう呟いた・・・    浦和 良は軟禁されていた。  件の大富豪の屋敷に、である。  予知能力を持った少年のことを聞きつけたその富豪・・・豪徳寺 重蔵は、良 を呼び寄せ私欲のために能力を使うよう命じた。株価の上下動を予知せよと言う のだ。良は初め能力の存在自体を否定した。「そんなことができるなら、うちは 大金持ちですよ。」と。  なるほど、それは確かにそうだな。と、重蔵。  倫理感が皆無な重蔵は、能力があったら私欲に使わないはずがないと思ってい るようであった。  だが、それで納得する重蔵でもなかった。何でも構わない。自分のために予知 せよ。  良はまず一晩屋敷に泊めて貰い、重蔵の財産について予知できないかやってみ た。  すると・・・ 「あの・・・豪徳寺さん?」 「なんだ、何かわかったか?」 「何か・・・こう・・緑色?・・エメラルドか何かでできた宝石細工があります か?」 「ある!それがどうかしたのか?」 「・・・よく・・わからないんですけど・・・狙われてるみたいですよ。」 「『乙女の涙』がか!?」 「ええ・・・近いうち・・・」 「誰だ!?狙ってる奴は?」 「そんなのわかりませんよ。」 「・・・中途半端な力だな!」 「すみませんね。でも・・近い・・・多分数日のうちに・・です。」  良は動じずに答えた。 「ふむ・・・あてになるのかわからんが・・・・」  その結果、泥棒を捕まえるまで屋敷に軟禁されることになり、両親と行くはず だった旅行を良だけはキャンセルした。この地域において、重蔵の権力は絶対的 であり、警察ですら逆らうことは出来ない。そんな訳で、良の家には今誰もいな い。  いかにもガラの悪そうなガードマンが増員され、良の予知に従って防犯体制が ・・・泥棒を捕らえるための罠が敷かれていく。  良はなんだかとても、嫌な予感がした。  それは、いつものようにビジュアルを伴う予知ではなかったが、なにか、こう ・・・とても・・・嫌な・・取り返しがつかないことを自分がしているような感 覚であった。

 

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